ミュージアムのひととき
第11回 Hulia ʻAno (フリア アノ)
展示会場のロングギャラリーに入るとコンコンコンコン、と木製の道具を利用してkapa(カパ:木の繊維を利用して作られたハワイアンが衣類や寝具として用いていた和紙のような手触りの物)を作っている音やpahu(パフ:太鼓)を叩く音が聞こえてきます。昔のハワイの人たちはこのようなkapa やpahu など生活に必要な物を全て自然の素材から作っていました。家やカヌーなど大木を利用して作る物から、ipu (イプ:瓢箪)で作られた水筒や器、kōkō (ココ:植物の繊維で作るコードで編まれたネット)、lau hala (ラウ ハラ:パンダナスの葉)で作られた帽子やバスケット、そして王族の象徴として鳥の羽根で作られたʻahu ʻula(アフウラ:マント)、lei (レイ:首飾り)といった手の込んだ装飾品まで様々な物があります。
今回の展示のタイトル”Hulia ʻAno” のhulia (フリア)は探索する、調べる、 ʻano (アノ)は種類、本質、性質、形、スタイル、イメージといった意味があります。ハワイの人たちが自然と共存する中で自然を深く探求し、その姿かたちや性質を自分たちの生活に必要な物のデザインやパターンに取り入れていたことがよくわかります。”Hulia ʻAno : Inspired Patterns” は植物標本、海洋生物、動物学を含む自然科学から文化的な装飾品や日用品までビショップミュージアムの各セクションで保管されてきた貴重なコレクションアイテムを通してハワイの人々の暮らし、価値観、芸術性を学ぶことができる展示です。
ミュージアムのひととき
第1回 人類学部 篠遠喜彦博士 [プロフィール]
第2回 古文書館 館長 デソト・ブラウン
第3回 Makahiki (マカヒキ)
第4回 Kumulipo (クムリポ)
第5回 Heiau (ヘイアウ)
第6回 Heʽe nalu (ヘッエ ナル)
第7回 Maui a me Manaiakalani (マウイとマナイアカラニ)
第8回 Manu (マヌ)
第9回 Manō(マノ)
第10回 Papahānaumokuākea(パパハナウモクアケア)
第11回 Hulia Ano(フリアアノ)
第12回 ハワイの伝統航海カヌーHōkūleʻaの世界一周航海
第13回 Holo Moana(ホロ モアナ)
第14回 ハワイの伝統航海カヌーHōkūleʻa の世界一周航海
第15回 UNREAL (アンリアル)
第16回 私が見て感じたラパ・ヌイ イースター島
第17回 He Wa’a He Moku, He Moku He Wa’a : カヌーは島で島はカヌー
第18回 Nā Ulu Kaiwiʻula ハワイアンネイティブガーデンに魅せられて
”Hulia ʻAno : Inspired Patterns” 開催中のロングギャラリー
”Hulia ʻAno : Inspired Patterns” 開催中のロングギャラリー
< ”Hulia ʻAno : Inspired Patterns” ロングギャラリーで2017年10月16日まで開催>
自然素材を活かした形や装飾のデザインとして用いられていた模様にはそれぞれ名前があり、その言葉の持つ意味が説明文に掲載されています。ハワイ語は一語で幾つか異なった意味をもつ単語が多く、形や模様の名前もいろいろな意味があります。
”Hulia ʻAno : Inspired Patterns” ではハワイアンが生活によく取り入れていた形状またはパターン12種類を選びそれぞれのテーマに沿ったコレクションを各ショーケースに展示しています。今回はその中から数点ご紹介します。
* Hoaka (ホアカ)(1)三日月、アーチ形(2)新月から数えて二晩目の月の形の名前(3)輝く、明るい(4)影を落とす(5)口などを開ける(6)霊的なスピリット(7)腹部の病(虫垂炎)と様々な意味があります。
Hoaka のショーケースを見ると、この単語の(1)の意味である三日月やアーチ形を取り入れている物が展示されています。(写真2 参照)目を引くのが赤と黄色の組み合わせが鮮やかなʻahu ʻula に施された三日月のデザインです。王族の装飾品である鳥の羽根のマントʻahu ʻulaについてはミュージアムのひととき第8回 “Manu” で詳しく取り上げていますので御覧下さい。
(2)の意味のようにhoakaは月の形の名前でもあります。昔のハワイアンは月を観察し、月の満ち欠けは生活規則に大きく関わり大切であったので一ヶ月に三十、毎晩形の変わる月に名前をつけていました。ハワイアンホール2階にあるムーンカレンダーによると「Hoakaの薄い三日月のアーチ型はまるでボウル(器)のようであるけれどもそれは単なる器ではなく、mana(マナ:身体的、スピリチュアル的に強い力)を受け入れる器として見られていた」という解説があります。このショーケースに展示されているʻahu ʻulaを身に着けていた王族は天に昇るhoaka の三日月のように大きな器に合う偉大なmanaを持ったチーフであったかもしれません。
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